04 メルロー

 原料葡萄の話の3回目はメルロー種を挙げることにします。あの高価なワイン「シャトー・ペトリュス」の原料として有名です。

 天下の銘醸地ボルドーのメドック地区ではカベルネ・ソーヴィニオンの個性を和らげる副原料として使われて来ました。

 同じボルドー地方でも右岸のサンテミリオン地区やポムロール地区ではメルロー種が主原料にかわります。この地では長い間カベルネ・フランとの組み合わせでメドック地区とは違ったスタイルのワインを産み出して来ましたがメドック地区のトップシャトーを凌駕することはありませんでした。

劇的に様子が変わったのは「シャトー・ペトリュス」の出現からです。ポムロール地区でメルロー種だけで造られた「シャトー・ペトリュス」の人気が高まったのは20世紀の初めということですから、100年以上昔ということではありますが、酒の業界におりました私でも名前を知りましたのはやっと30年位前のことです。それも「ペトリュス」が凄い「ペトリュス」の奇跡と言う話であって、メルロー種が凄いとは当時殆ど言う人がいませんでした。

メルローの個性を理解したいとは思いましたが、高価な「ペトリュス」以外ではメルローだけを原料としたワイン(メルロー100%に近い)は当時とても入手がしにくく、本当のメルロー種体験は10年位前の事でしたか。極々普通のメルローを試すことが出来、これが実はかなりなショックでした。

色合いは濃い方ですがカベルネ・ソーヴィニオン程には濃くもなく深くもなく、ピノ・ノワールの様には淡くはないのですが若いうちから微かに褐色を感じます。グラスに注ぎますと何となくとろりと、重みを感じました。

香は良く言えば控えめで奥ゆかしく、果実の香りも決して華やかさがありません。微かに粘土の香や古い木の香り、乾いた皮の香りも微かに感じられましたが、熟成樽の使い方で香りは随分変わるだろうなと思いました。

ショックは口に含んだ時です。格段にまろやか、滑らか、濃厚、ワインの味を構成する基本的な要素(甘、酸、辛、渋、苦)が殆ど完全にバランスし、しかもたっぷりと厚く大きいのです。甘、酸、辛、渋、苦とは別の旨味が豊なのです。舌触りも滑らか、喉を通過する時は何の抵抗もなくするりと通り、かなり後まで舌に美味しさと滑らかさが余韻として残ります。「味」のメルロー種です。 

新世界の生産者がメルロー種に挑戦し、新しい栽培システムでどうやらこれをものにしたと思われます。価格も2千円を切るものもありますから、メルロー体験もして頂き易くなりました。

写真はシャトー・オーゾンヌを訪ねた際、サンテ・ミリオン村の広場で。左手角の小さなレストランはお奨め。